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「中東革命」は誰のものか、または匪賊対革命ごっこ(その2)

それでは前回の予告通り、イタリア発のリビアについての論考を紹介したい。わたしが3月上旬の時点で眼にした中で、まず最初に面白いと感じたのは、Debora Billiという女性ジャーナリストのブログの2月25日付記事「リビア:色彩革命か否か?」である。このたびリビアについての言及を見ていく中で、石油やガスをはじめとするエネルギーの問題、またそれと関わる経済や環境の問題の専門家たちの独立した国際組織を標榜する「ピーク・オイル研究協会(ASPO/Association for the Study of Peak Oil)」という団体を偶然知ったのだが、ビッリ氏はそのイタリア支部(ASPO-Italia)に所属するジャーナリストだという。「リビアについて何が起こっているのか」「背後に何があるのか」を読者に訪ねられたことへの返答として彼女は、今ある「情報」を整理し共有しましょうと言うのだが、その列挙が皮肉であり愉快である。すでに3週間前のものであるが、以下にその「情報整理」の部分(箇条書きの部分)を抜粋して紹介する。ただ当方も試訳をしてみたとは言え、別にさほど外国語に自信があるわけではなく、そもそもあらゆるところが誤っている可能性もある。イタリア語により通暁している諸君には、当方へこっそりご教示してくれるよう願いたい。またこの拙訳においては、元の文章につけられているリンクは省略してある(その部分はゴシック文字で示した)。さらに、〔〕内には訳注を付した。


http://petrolio.blogosfere.it/2011/02/libia-rivoluzione-colorata-o-no.html


―――――


死者一万人。ツインタワーの死者二万人なみに少ない?
〔2001年の9.11自爆テロ事件の死傷者の数が、当初誇張されていたのは有名な話である〕


三十万人の将来の〔避難民〕上陸。Pietro Cambi〔ビッリ氏の同僚〕が指摘するには、かつてノルマンディー上陸作戦に参加しているのは「わずか」十五万人だった。北アフリカ全土を合わせてもそれだけが浮かぶだけの船は存在しない。


共同墓地。これについてはすでに言うべきことを言った
〔カダフィ大佐の市民「爆撃」により多数の死者が出て、「臨時墓地」に埋葬せねばならないと報じられたが、それは以前からあった「共同墓地」だったと後に言われた〕


・民兵が病院の負傷者を殺害し、「一軒ごとに」人々の家屋を襲撃している。フセインの兵士たちが、新生児を保育器から放り出したという事件をよく思い出すこと。これは、広告業者によって「つくられていた」ものだったと判明している。


黄色い帽子の傭兵。今のところ、私には傭兵とは思われない。皆さんは、民衆を虐殺するためにうろつく傭兵が、カナリア色の黄色い帽子をかぶっていることがありえると思うだろうか? 500メートル先からもわかり……テレビカメラにも映るような。


・カダフィの迷言。アルカイダがドラッグを〔反乱側の〕ヨーグルトに混ぜた。確かに、彼はそう言った。もしくは、少なくとも私がそう信じている。


・イタリアの傭兵が反乱軍を支援している(カダフィ)


・イタリア空軍がカダフィを支援している(各紙)


・カダフィは、おそらく、市民に対し化学兵器を使用する可能性がある。あるいはそうではない。


・グアンタナモ収容所から脱走したテロリストに指導され、アルカイダが砂漠の中にイスラム首長国を築いている可能性。誓って言うが、これはリビアの大臣が言ったことであり、ステーファノ・ベンニ〔イタリアの人気作家〕の小説の話ではない。


首長〔カダフィ〕が石油の蛇口を占めると脅迫している。


反乱側が石油の蛇口を閉めると脅迫している。


ENI〔イタリア炭化水素公社〕が(おそらく)石油の蛇口を閉める。それにしても結局、このありがたい石油の蛇口を握っているのはだれなのか?


・先日、「アンノ・ゼロ」〔テレビ番組、政治トークショー〕で、君主制時代の国旗が称賛されていた。これはキレナイカの王イドリースのものである。我々もまた君主制論者になったのだろうのか?


・先日、「アンノ・ゼロ」で、インターネットを使った革命家の「勇気ある若者」の一人がインタビューされていた。その彼はどこにいるのか? スイス


・先日、「アンノ・ゼロ」で、アメリカの友である独裁者たちが〔カダフィと〕区別されるのは、彼らの警察が群集にも発砲しないし残虐行為も働かないからであると、ルトワック〔アメリカの戦略家〕が言っていた。その通り、まさに、ピノチェトがそうだった。

〔チリのピノチェト政権については、諸君には説明不要だろう〕



―――――


いやはや、かの国でもベルルスコーニ首相の動向の裏で、素敵な「情報」が飛び交っていたようではないか。確かに、カダフィ氏のほとんど神がかった(アルカイダのヨーグルトを食したゆえの?)発言や、それに合わせたようなリビアの閣僚の発言は超現実的なものである。ビッリ氏もそれにまったく呆れており、明らかに大佐に対しては何らシンパシーを抱いていないのだが、同時に彼女はこういったリビア当局の奇妙な言い分に憫笑を加えるだけではすまないことも心得ている。彼女が疑念を持つのは、彼らの下手な言い分を遙かに超えた規模で、欧米のジャーナリズムにおいて、以前何度も見た覚えのある「独裁者」とその野蛮な活動についての疑わしい報告がもてあそばれていること、またその逆に、「民主化闘争」とはあまり縁のなさそうなものが、むしろそれを代表するものとしてピックアップされているのではないかということである。特にわたしは、最初「民主化」のしるしとされている旗が「君主制時代の国旗」とは知らなかったので少々驚いた次第である。カダフィ氏がおそらく息子に政権を継がせようとしていたことを差し引くとしても、わたしには「民主化」と「君主制時代の国旗」への回帰が結びつかなかい。そして、日本においてリビアの「民主化」を支持する人々は「君主制論者」なのだろうか? まあ日本において「民主主義」をどうこう言っている中には、「日の丸」の下で革命的変革が起こると信じている、さらには君主が存在する国家でも「代議制」が行われれば「共和制」であるという奇怪極まりない疑似政治学を展開する連中もいるようなので、わたしの疑問もあまりメジャーとは言えないだろう。



こうした数々の「誤報」(あるいは「偽情報」)に基づいて、リビアの「民主化」を求める西欧諸国(「我々」を含む)の「世論」は見事調達され、彼女の記事がアップされた翌日の2月26日に、国連の安保理決議は成立したわけである。彼女はこうした「情報戦」(圧倒的に「民主派」、というより「欧米」が優勢な)について、「民主化VS独裁者」という単純化された見方に反論する意見が、ようやく「共産主義者」の一部から出始めたことを指摘するものの、こういった見方も少数である(注)。この中で的確な仮説を紡ぐのはほとんど不可能かもしれないとしつつ、彼女はこの時点での暫定的な結論として、


・少なくともエジプトおよびチュニジアの民主化運動とは違う何かが起こっている
・それは「色彩革命」ではなく、同時的な複数の反乱であり、内戦的性格を持つ
・むしろ「色彩革命」を無理に見いだすことから、「人道的」意図に基づく軍事干渉への発展を警戒すべきである


としていた。結局、問題は石油の管理権につながるものではないかということであるが、2月の時点でこのような見解を発表していた人物は、「我々」の中にはとりわけ少なかったように思われる。


火のないところに煙は立たぬ、と言う。おそらくカダフィ氏の国家も「火のないところ」ではない。しかしそれとは別に、「火のあるところ」に黒煙を山と出すような品質の薪を次々とくべている連中が存在する。こうした黒煙の真っただ中にいる「我々」が、カダフィ側なり反乱側なりの正確な実態を見いだすことは難しい。まずしなければならないのは黒煙を吹き払うことであり、様々な対象への評価はそれからでも遅くはないことを、ビッリ氏の文章は教えてくれている。もし自分の隣に、こうした状況をまったく認識しないままにリビアの「独裁者」を批判し「民主化」を支持するぞと叫んでいる人がいるとすれば、一酸化炭素中毒で人事不省に陥る前に早急に介抱する必要があるだろう。


(つづく)





(注):2008年の選挙で、イタリアにあった二つの主要な共産主義政党(共産主義再建党、イタリア共産主義者党)はいずれも大敗を喫し、中央での議席はともにゼロである。また、こうした民主党より左翼的であることを自負する勢力の中にも、国連およびNATO主体の「人道的介入」理論に対しては、少なくとも明白な否定はしない人々もいるようである。




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